HYTSヴァイオリンな日々

ヴァイオリンの魅力と謎について日々思うことを書きたいと思います。

ヒル商会の本

こんにちは、HYTSです。


今回は、ヒル商会の書籍について書きます。




「アントニオ・ストラディヴァリ  その生涯と作品(ANTONIO STRADIVARI HIS LIFE AND WORK)」


ウィリアム・ヘンリー・ヒル

アーサー・フレディック・ヒル

ルフレッド・エブスワース・ヒル

野田  彰 訳


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ヒル商会は、イギリスで100年程続いた楽器専門店(1887年〜1994年)です。この本は、創設者ウィリアム・エブスワース・ヒル(1817〜1895)の三人の息子によって1902年に書かれた本です。




2018年10月に六本木で開催された、ストラディヴァリウスの展示会「東京ストラディバリウス・フェスティバル2018」で注文し、購入しました。




ヒル商会は、ストラディバリの若年期から晩年期の傑作のほとんどを手にとって見ることができたので、この本を書くことができた、と後書きにあります。



ヴァイオリンの書籍は、日本語で書かれたものは少なく、英語、イタリア語、フランス語など外国語で書かれたものが多いです。



因みに、ヴァイオリンの書籍は高価で、買う時は、結構大変です....。




実は、僕はこの本を中古の洋書で入手していたのですが、細かい英語を読むの大変だったため、なかなか読み進んでいませんでした。


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今回、この日本語訳を入手でき、訳して頂いた方、出版社に大変感謝しています。




ストラディヴァリの作品の変遷が書かれており、22歳の若い頃の作品から晩年期の93歳までの作品の特徴まで書かれています。




晩年期弟子達の手を借りながらも、体が意のままにならない中、製作した楽器の特徴も記載されています。死ぬまでヴァイオリン製作を全うした製作家の姿勢が、読み取れます。




ストラディヴァリウスの音について、記載でも興味深い一文があります。



「今日、美の感じ方や音についての認識が、昔と同じ程度に涵養されているかは随分疑問であるとさえ思われる。以前より大きな音や、高度な技巧的効果を生み出すために、個々の楽器の個性を犠牲にしてしまう現代のオーケストラ・スコアの作り方の傾向や、コンサート・グランド・ピアノの室内楽での濫用は、音の美しさそのものに対する感じ方を、著しく損なうもののように思われる。」

(本文197、198ページより引用)



ヒル兄弟は、19世紀に既にこの疑問を提起していたんですね。



どうあるべきかの結論は、個人の感性の問題ですが、ヴァイオリンの音の聴き方、弾き方について考えさせられますね.....。




また、材料についての記述では、ヴァイオリンの大事な要素について記載されています。



1 ニス

2 作りと寸法

3 材料の木



本では、1、2、3の順に大事と記載されています。



僕は、素晴らしい木の選択こそ大事なのではと、なんとなく思っていたため、3、2、1の重要に大事と考えていました。



しかし、ニスは楽器全体の振動に影響を与えるでしょうし、楽器の作りと形は音響設計そのものなので、大事な要素だなと考え直しました。



所有している楽器の表面のコンディションも大事にしたいですね。



ストラディヴァリに関する伝説や逸話について記載された書籍も面白いですが、本書は客観的な文章で書かれています。


ヴァイオリンに対する見識を磨くのに、素晴らしい書籍です。




100年前に書かれた書籍ですが、ヒル商会程ストラディヴァリウスに触れた楽器店は、歴史的に珍しかったんでしょう。




実は、ヒル商会は、ガルネリについての本も書いています。こちらは英語のみですが...。


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もしこれも日本語で読める日が来たら、望外の喜びです。


まず英語力磨かないと....ですね......。