時を超える音
こんにちは、HYTS です。
ある1910年代の録音について、書きます。
1877年トーマス・エジソンが、円柱型アナログレコードを開発し、録音することが出来るようになりました。
そして、音楽家が徐々に演奏を録音するようになりました。
ベルギーのヴァイオリ二ストであるEugène Ysaÿe(ウジェーヌ・イザイ)は、1912年〜1919年に演奏を録音しています。
イザイについて、面白いエピソードがあります。
フランスのヴァイオリニストJacques Thibaud(ジャック・ティボー)著の「ヴァイオリンは語る」では、少年のティボーが、イザイを回想しています。
この回想では....
少年ティボーとイザイは夕食を共にした後、イザイは、少年ティボーに、
「君のヴァイオリン聴かせて」
と言った。
実はこの時、ティボーは、大ヴァイオリニストのイザイであると知らない。
少年ティボーは、
「ウィエニャフスキーのコンチェルトを弾きます。」
という。
イザイは、
「では、僕は君の伴奏をしよう。オーケストラのかわりをするよ。」
といい、ヴァイオリンを取り出す。
ティボーがコンチェルトのソロパートを弾くと、
イザイは、ヴァイオリンは勿論、低弦やシンバルやオーボエや、さらにはティンパニーにいたるオーケストラの全ての奏者の真似をするという奇跡をやってのけた...
とティボーは回想しています。
イザイの録音で、「ウィーン奇想曲」があります。
この録音を聴くと、イザイは、今では考えられないぐらいゆっくりとしたテンポで、演奏しています。
ゆっくりしたテンポで、豊潤に音が響いて、途切れることなく歌が聴こえてきます。
僕は、ノスタルジーの世界に引き込まれてしまいます....。
冷静に考えると、これだけゆっくりしたテンポで豊かに歌い上げることは、超絶的な技術が必要だと思います。
これも、音楽の奇跡ですね....。
幸いにも、Apple Music で、イザイの演奏を聴くことが出来ます。
100年の時を超えて、音楽の奇跡を届けてくれます。
イザイが愛奏したヴァイオリンは、1740年製のガルネリ・デル・ジェスです。
1998年に、Isaac Stern (アイザック・スターン)から日本音楽財団が譲り受け、現在演奏家に貸与しています。
イザイが愛したヴァイオリンの音は、今でも聴くことが出来るんですね。
楽器の中には小さなラベルが貼られ、赤いインクで、フランス語である一文が遺されているようです。
「このデル・ジェスは私の生涯を通じて忠実なパートナーだった。イザイ1928」